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法則3 本睡眠前にうとうとしない

仕事を終え、帰りの電車内。座ったとたん、つい、うたた寝をして最寄り駅を乗り過ごしてしまった……多くの人がこのような経験をしています。
座席も温かく、電車のゆらぎによって寝つきやすくなってしまうことは否定しません。しかし、この時間帯に寝てしまうと、夜の睡眠に悪影響が出てしまいます。

さて、図6次のNとHの図の帰宅時間帯の部分③を見比べてみましょう。

Nのほうは平日の21時前後に短時間眠っている箇所がいくつかありますね。帰りの電車でのうたた寝、もしくは帰宅後に自宅のソファーに座ってそのまま寝落ちしてしまったといったところでしょう。
逆にハイパフォーマーであるHの図を見てみると、眠気を感じてはいるものの、帰宅時間帯に寝ている様子は見当たりません。
なぜ、21時前後のうたた寝が夜の睡眠へ悪影響を及ぼすのか?それは、睡眠のある仕組みが関係しています。

睡眠の仕組みは、バネの原理に似ており、起きている時間が長いほど眠る力が溜まっていきます。眠る力が溜まっていく様子は、バネを目一杯引っ張っている状態をイメージしてください。
これを専門用語で「睡眠圧(睡眠の恒常性)」といい、深く長い眠りである「本睡眠」に向け、この睡眠圧をしっかりと貯蓄していくことが大切になってきます。本睡眠に入る直前、それまで目一杯引っ張ってきた睡眠圧のバネを一気に弾き飛ばします。溜めに溜めてきた睡眠圧を本睡眠の直前に一気に開放することが、深い眠りに入るための条件となるのです。具体的にいえば、通常23時に就寝する人はだいたい夕方16時以降は寝ずに睡眠圧をチャージしておく必要があります。

しかし、Nのように本睡眠に近い時間帯に少しでも眠ってしまうと、今まで溜めてきた睡眠圧が減ってしまい、その夜の本睡眠の質が損なわれてしまいます。
ハイパフォーマーは本睡眠前には寝ない。これが一般のビジネスパーソンとの違いです。 過去、私が睡眠アドバイスをした人のなかに、夜中に突然目覚めてしまうことで悩んでいるCさんという人がいました。CさんはIT企業に広報担当として務める20代半ばの女性。夜ふかしはしていないはずなのに、なぜか眠りが浅い。深夜3時ごろになると目が覚めてしまい、日中の睡眠不足に悩まされていたのです。

話を聞くと、Cさんは毎日帰りの電車内でうとうと眠っていたことが判明しました。そこで、睡眠圧の仕組みを伝え、まずは帰りの電車で眠ることをやめてもらいました。すると、夜中に突然起きてしまうことがなくなったのです。これは、序章に登場したNTTデータの西村さんとほぼ同じ事例です。本睡眠に近い時間帯で睡眠圧を抜いてしまっていることが、中途覚醒の原因でした。

さらに、良い影響として現れたのが、朝起きた時のすっきり感です。Cさんは日中も強い眠気に襲われることがなくなり、集中力が格段にアップしました。
夜の本睡眠に合わせて睡眠圧を溜めていく――たったこれだけといわれればそうなのですが、少し気をつけるだけで、睡眠の質は上げられるのです。

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(出典:『ハイパフォーマーの睡眠技術』小林孝徳 著/実業之日本社 刊/第2章『ハイパフォーマーになるための睡眠技術』より抜粋、編集)

著者:小林孝徳
1987年生まれ。新潟大学理学部物理学科卒。素粒子物理学専攻。2013年12月にSleepTechベンチャー・株式会社ニューロスペースを設立。睡眠の悩みを根本的に解決すべく、大学や医療機関と連携し『法人向け 睡眠改善プログラム』を開発。吉野家やANA、DeNA、東急不動産ホールディングスなどの大企業を中心にこれまで約80社1万人以上のビジネスパーソンの睡眠問題を解決してきた。現代の人々がレストランで食事を楽しむのと同じように、三大欲求の1つである睡眠を、一人ひとりが睡眠をデザインし楽しめる世界の実現を目指している。睡眠改善ナイトウェア『eSleepy』の睡眠プログラム協力。

小林さん著書
「ハイパフォーマーの睡眠技術」より
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