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法則2 起床時間が整っている
次に、2つの図の ②の部分、起床時間を見比べてみましょう。
Hは土日を含めて起きる時間がほとんど整っていますが、Nは起床時間にばらつきがあります。特に土日は、昼頃まで寝ている様子が窺えますね。
結論からいうと、ハイパフォーマーと呼ばれるビジネスパーソンは、一週間をとおして起床時間が整っています。
一定の時間に起床し、光を浴びる。このセットを継続することによって身体のサーカディアンリズムが規則的になります。逆に、極端なずれが生じると、リズムが後ろ倒しになり、眠気に襲われやすくパフォーマンスの低下につながってしまうのです。ここで過去、私が睡眠アドバイスを行ったBさんの事例を紹介します。コンサルティング業界に勤めている30代OLのBさんは、毎週月曜の朝に「会社に行きたくない……」という気持ちに悩まされていました。いわゆるブルーマンデー症候群です。別名、月曜病とも呼ばれるこの症状は、月曜日の朝を向かえると身体がだるく、気分が落ち込んでしまう状態を指します。月曜日に限らず、長期連休明けなどにこの症状に陥る人も多くいます。
Bさんは特に、月曜日・火曜日は身体が辛く、水曜日からやっとエンジンがかかるような状態に悩んでいました。さらに、平日の帰宅時間が常に遅いため、どうしても土日は一日中寝てしまう。「休みの日だからたくさん寝なきゃ!」という人が陥りやすいのがブルーマンデー症候群の特徴です。
私たちが行った調査では、理想とする睡眠時間と現実の睡眠時間では1~2時間の差があることがわかっています。多くのビジネスパーソンは慢性的に睡眠が足りていないという状況を考えると、オフの日にたくさん寝ようとするのは当たり前です。しかし、これでは十分な休息にはならないどころか、却って不調に陥るといった逆効果になってしまうのです。
では、 Bさんのように週末だけ起床時間が遅くなると身体に何が起こるのか。
当然、平日の起床時間と3~4時間のずれが生じます。たとえば、平日のサーカディアンリズムのスタート地点が朝 6時だったとすると、週末に12時ごろまで眠った場合、起床リズムのスタート地点が昼の12時へとずれ込んでしまいます。
サーカディアンリズムのスタート地点が狂った状態で翌週の月曜日の朝を迎えると、Bさんのように「身体はまだ寝ているけれども強制的に起きなければならない」というつらい状態に陥ります。休日につくられてしまった起床時間のずれは、ビジネスパーソンのパフォーマンスに、確実に悪い影響を及ぼします。
このように、ブルーマンデー症候群の構造はサーカディアンリズムのずれによって引き起こされているのです。
私は、Bさんにサーカディアンリズムを整えることを提案し、土日の起床時間も平日と同じ時間に揃えることを推奨しました。睡眠のリズムを一定に保つことを徹底し、週末の過ごし方を変えたBさん。すると、これまで憂鬱な気分でスタートしていた月曜日がそうではなくなり、ブルーマンデー症候群の特徴である、だるさや意欲の低下を感じなくなったといいます。
それだけではありません。
適正な睡眠リズムを理解したことは、Bさん自身の仕事面へプラスに作用しました。たとえば、「平日の特に13時頃になると眠たくなる」「10時頃は集中力を出しやすい」といった自分のパフォーマンスの傾向が見えてきたのです。
ハイパフォーマーなビジネスパーソンにとって、自分の眠りの傾向を理解することはとても重要なことです。自分のパフォーマンスが最大限に発揮できる時間帯を予測できると、重大な決断をする会議や頭を使う資料作成をその時間帯に行うようスケジューリングできます。逆に、眠気に襲われやすい時間帯は、頭を使わない単純作業をするなどの工夫ができます。仕事にメリハリが生まれ、業務効率をアップできます。
こうして、Bさんは時間帯に合わせて仕事内容をコントロールできるようになり、ハイパフォーマーの仲間入りを果たしました。
リズムを整えると、自分がいつどのくらいパフォーマンスを発揮しやすいのか知ることができます。自分の能力の出しどころを理解した上で仕事をこなすことも、ハイパフォーマーの特徴だといえるでしょう。
(出典:『ハイパフォーマーの睡眠技術』小林孝徳 著/実業之日本社 刊/第2章『ハイパフォーマーになるための睡眠技術』より抜粋、編集)
著者:小林孝徳
1987年生まれ。新潟大学理学部物理学科卒。素粒子物理学専攻。2013年12月にSleepTechベンチャー・株式会社ニューロスペースを設立。睡眠の悩みを根本的に解決すべく、大学や医療機関と連携し『法人向け 睡眠改善プログラム』を開発。吉野家やANA、DeNA、東急不動産ホールディングスなどの大企業を中心にこれまで約80社1万人以上のビジネスパーソンの睡眠問題を解決してきた。現代の人々がレストランで食事を楽しむのと同じように、三大欲求の1つである睡眠を、一人ひとりが睡眠をデザインし楽しめる世界の実現を目指している。睡眠改善ナイトウェア『eSleepy』の睡眠プログラム協力。
小林さん著書
「ハイパフォーマーの睡眠技術」より
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