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日本が睡眠を問題視できない2つの理由

昨今、睡眠を課題として捉えて事業展開をするSleepTech市場が世界的にも認知され始めており、世界最大の家電見本市(CES)では、昨年初めてSleepTechが独立した1カテゴリーとして扱われました。
しかし、日本のヘルスケア産業においてSleepTech市場の規模はまだまだ小さく、さらにいえば、まったく誇れない世界低水準の睡眠時間しか確保できていません。それにもかかわらず、日本は睡眠問題をそこまで重要視できていません。国家レベルで危惧すべき睡眠課題に対して、あまりにも人々の意識が低すぎることに私は危機感を抱いています。
なぜ、日本には睡眠の重要性が浸透しないのでしょうか。これには大きく2つの理由があると考えています。

理由1 「眠いのは甘えだ!」理不尽な根性論で片づけられる社会背景

まず、第1に考えられる理由は、日本の文化的・社会的背景が大きく影響しているということ。
過去、高度経済成長期真っ只中の日本は、仕事にかけた時間が生産性や企業価値につながるとされていました。いわば、「時間と労力をかけた分だけ成長できる」とみなが信じていたし、実際にそうだったのです。そうした環境では、熱意や仕事量の多さがビジネスパーソンの〝美学〟として定着していました。未だにその美学は日本社会に根強くあります。そしてこの美学は、睡眠時間の確保とは極めて相性が悪いのです。
人口が増え続け、経済が右肩上がりの状況であれば、際限なく働いて大量に生産し、それに応えるように、モノは大量に消費されました。しかし、人口が減り続ける超高齢化社会の現在では、事情は大きく変わります。日本をここまでの経済大国にしてくれたのは、身を粉にして働いた人々のおかげですが、それではもう立ち行かない状況にまで追い込まれているのです。

かの有名な「24時間戦えますか」のキャッチコピーはもう古すぎます。限られた時間の中で最大限の能力を発揮し、業務効率を上げ、生産性をアップする。そのような新しい時代の働き方においては睡眠を「資本」と捉える必要があるのです。

理由2  見えないからこそやっかいな睡眠不足

第2に挙げる理由は、睡眠による問題が目に見えづらいこと。また、たとえ変化が見えたとしてもそれを睡眠と結びつけて考えられなかったり、解決方法がわからないという難しさがあります。
たとえば、太っていることが気になったらダイエットをして痩せられますね。家族に「最近、お腹が出てきたね」など指摘されたら血眼になって痩せる努力をするかもしれません。また、膝を擦りむいたら、薬を塗り、絆創膏を貼って治るのを待つでしょう。真っ青な顔色の社員を見かけたら、誰だって思わず「大丈夫ですか?」と心配すると思います。
しかし、睡眠不足にはこのような目に見える変化が見えづらく、解決策がないのが現状です。「太った」「血が出ている」「顔色が悪い」など誰が見てもわかるような傷や症状、外見への露出が極端に少なく、またそれに対する処置の方法も明確ではありません。「顔が疲れている」「目の下に濃いクマがある」などといった症状は睡眠不足を疑う症状といえるかもしれません。しかし、変化が見えたとしても、多くの人が具体的な解決方法がわからないのです。そして、どうすれば良いのかわからないまま、パフォーマンスが低下する。また、その不調を睡眠と結びつけて考えられない、あるいはたとえ睡眠不足を疑っていたとしても、根性でどうにかなると思っているうちは、「頑張りが足りないからだ!」などといった理不尽な根性論で片づけてしまう。問題の深刻さに気づかないまま、なんとなくやり過ごした最悪の結果、取り返しのつかないことになってしまう危険があります。

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(出典:『ハイパフォーマーの睡眠技術』小林孝徳 著/実業之日本社 刊/第1章『睡眠資本主義で世界は良くなる』より抜粋、編集)

著者:小林孝徳
1987年生まれ。新潟大学理学部物理学科卒。素粒子物理学専攻。2013年12月にSleepTechベンチャー・株式会社ニューロスペースを設立。睡眠の悩みを根本的に解決すべく、大学や医療機関と連携し『法人向け 睡眠改善プログラム』を開発。吉野家やANA、DeNA、東急不動産ホールディングスなどの大企業を中心にこれまで約80社1万人以上のビジネスパーソンの睡眠問題を解決してきた。現代の人々がレストランで食事を楽しむのと同じように、三大欲求の1つである睡眠を、一人ひとりが睡眠をデザインし楽しめる世界の実現を目指している。睡眠改善ナイトウェア『eSleepy』の睡眠プログラム協力。

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